■『歯科医院経営』2006年3月号

スタッフの採用と院長の姿勢

歯科医院を繁盛させるヒント集3

(有)売り上げ向上委員会代表取締役&開業医 青山健一

スタッフ採用の視点

歯科医院経営2006年3月号

[親が厳しくて躾ができていて、忍耐力がある人はいい]

 いい歯科医院の条件は、いいスタッフがいるということです。院長は、スタッフの採用にあたって、人を見る目を養っておく必要があります。
 最近は、学校に子供の躾までを期待している親が多いと聞きます。躾をしていくには、愛情・厳しさ・忍耐力など多くのことが必要で、学校の先生が何十人もの子供に、同時にできるほど簡単なことではありません。

 子供にうっとうしがられながらも、同じことを何度も忍耐強く注意することによって身につくものです。いったん身につけても、悪いくせに変わることは簡単なので、折に触れ注意する必要があります。親が厳しく育ててくれている人は、そういう躾が身についている場合が多いので、社員教育がラクです。

[前職場がヒマだった、経営が苦しかった人は敬遠!]

 私は、ヒマな職場や、経営的に苦しい職場にいた人を採用することには、二の足を踏みます。
 そういう所に勤めていたのは、その人の責任ではありませんが、ヒマに体が慣れてしまっていると、なかなか急に忙しくは働けないものだし、経営不振の職場というものは、どうしても暗いムードが漂っているので、その人も自然に暗くなってしまうものなのです。そういう所で働いていた人を、改善しようと努力するよりは、忙しく働いていた人を教育するほうが、断然簡単なのです。

[性格はボスタイプよりチームワーク・協調性のほうが無難!]

 職場や規模にもよりますが、小さな歯科医院では、リーダー的な決断力・判断力・指導力のある人は、メリットよりもデメリットのほうが多いようです。

 そういうタイプの人は、嫌われ役に徹してでもリーダーシップを発揮してくれるのであれば、とても戦力になりますが、なかなかスタッフでそこまで徹する人は少ないものです。得てして我の強い目立ちたがりやのタイプで、リーダーというよりもボスというような存在になってしまいやすいのです。そういう意味で、小さな医院がスタッフを採用するときには、ボスタイプよりもチームワーク・協調性のある人のほうが無難です。


スタッフに求めるより、先に与えること

 “ギブ&テイク”という言葉がありますが、先に与えてその後に見返りを期待することです。しかし人間は、誰でも損をしたくないために、与えたのに返ってこなかったら損じゃないかと思い、「先に何かを与えてくれたら、その恩返しはするよ」という気持ちになるのです。

 スタッフに対しても、「一生懸命働いてくれたら給与を高くするよ」「お前が素直になったら、オレも優しい上司になってやるよ」「忙しくなったら、給与を上げてもいいよ」「仕事ができるようになったら、賞与を出すよ」などと、相手が最初に変わることを期待していたのでは、なかなか物事は変わっていきません。

 確かに与えたことがムダになり、与え損ということは多々あることです。しかし、そもそも投資というもの自体がそういうものです。そのスタッフがやる気を出したり、成長するかは、ある種賭けだと思うことです。

 株にしても、恋愛にしても、先に投資してムダになってしまうことは、いくらでもあります。これからは英語が必要だと、英語の習得に投資したのに、英語を活かせる仕事に就けるとは限りません。だからといって、努力していなければ、そういうチャンスをゲットできる可能性もなくなります。結局、損をすることを恐れるのなら、何も手をつけない、始めないことが一番いいのです。

 今の状況を変えたい、スタッフにより戦力になってほしいと思うならば、経営者のほうが先に何かを与えなければなりません。それはもちろん、「お金」「休み」など目に見える条件だけではないと思います。スタッフへの褒め言葉でもいいですし、スタッフへの対応でもなんでもいいのです。

 先に自分が変わろうと意識する気持ちをもつことが大切で、経営者とスタッフは同じ立場の人間ではなく、経営者が一段上になって、大人や親のつもりで、スタッフに接しなければいけないのです。

必要以上にスタッフの行動が気になる時は、目を違うところへ向けよ

 スタッフの細かい言動などが、いちいち目についたり、イライラしたりするときは、ほぼ間違いなく、経営的にうまくいっていないときだと思います。

 経営的に順調なときは、スタッフの多少のミスや細かいことは、総合的に見たら「まあいいか」と許せてしまうのが、経営的にうまくいっていないときは、「お前らにも責任の一端があるんだ」ということを、心の中で考えてしまって、ついつい小さなことにまで、細かく注意してしまいがちです。

 自分に余裕があるときは、他人にも優しくしてあげられますが、自分に余裕がなくなってしまうと、自分の不運・不遇を他人のせいにしたくなってしまうものです。スタッフが明らかに問題児なら別ですが、実際には合格点の人にさえ、自分に余裕がないときには、必要以上に小言をいってしまいがちです。

 患者様を集めたり、売上げを上げたりするのは、経営者の仕事です。必要以上にスタッフに小言をいったり、イライラしても、スタッフのやる気を失わせるだけで、けっして状況は好転しません。自分の目が、経営や仕事本来のことに向いていないで、スタッフのほうに向きすぎている場合には、意識的に経営本来の方向に目を向け直すことです。

 いくらスタッフを注意したり、スタッフを代えたりして新しい人間を入れたところで、あなたのイライラの本当の原因が、スタッフにあるのではなく経営不振にあるときは、何の解決にもならないのです。自分の方針が間違っていたり、努力不足だったりしたのを、スタッフのせいにして責任転換していないか、今一度考えてみることです。


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